S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 手に取るのは、バッグに今日もつけてきたあのガムランボール。

 正確には子供の頃のお土産ではなく、新婚旅行でバリ島に行ったときにエツが再び買ってくれたものだ。さすがに二十年も前のものは黒ずんでしまったので保管してある。

 同じ形の綺麗なそれを取り外して、美乃莉のバッグにつけてあげた。

 幼いながらにアクセサリーの類が好きな彼女はすぐに反応を示し、チャリチャリと鳴る小さな玉をキラキラした瞳で見つめる。


「かわいい~。おとがする!」
「ガムランボールっていうの。これを持っていると夢が叶ったり、いいことが起こるんだよ」


 異国の地で奇跡の再会を果たしたワンシーンが蘇り、口元がほころぶ。


「美乃莉にあげる。ママはもう、願いを叶えてもらったから」


 愛しい娘は笑顔で私を見上げ、「ありがと!」とお礼を言う。その様子を優しい表情で見守っていた旦那様と、もう一度目を合わせて微笑み合った。

 これからは自分の手で幸せを掴んでいこう。大好きなふたりと一緒に。

 飛行機が地上に別れを告げる。新しい日常に向かって羽ばたく翼の先には、雲のない青空が広がっていた。


 End...+☆*