ストラスブールでの地震はニュースでも報道され、私もそれを見て被害の大きさを知った。

 古い建物の倒壊が相次ぎ、死傷者は数百人に上っているらしい。自分も旅した思い出の地が、酷い状況になっている映像を見ると心が痛む。

 パーティーの翌日、エツから『案の定、俺も行くことになった』と連絡が来た。邦人の安否確認や避難の支援でてんやわんやな上に、領事館で働く外交官も何人か怪我をしており、その代役として即戦力になれるエツが選ばれたのだそう。

 私はもちろん彼を送り出すことしかできず、帰ってくるのをひたすら待つのみ。今頃は現地での対応に追われているだろう。

 地震から四日が経ち、すでに彼が恋しくなっているところに、久しぶりに友人が電話をかけてきた。

 一日の仕事を終えてお風呂に入った私は、自分の部屋で缶ビールのプルタブを開けながら、テンションの高い彼女の声を聞いている。


『ストラスブールまで追いかけてった彼と婚約だなんて羨ましすぎる。この裏切者!』
「裏切ってないし。玲香(れいか)は周りにいっぱい素敵な男の人がいるんだから、早く特定の人見つけなって」
『好きでふらふらしてるわけじゃないわよー!』


 モテまくっているのに、いまだに将来を見据えた男性はゲットできていない彼女が嘆くので、私は苦笑を漏らした。