「彼女は語学研修の時、フランス大使館でお世話になった槙木さん。今、また同じ部署で働いているんだ」
「はじめまして! 石動くんにはコーヒー買ってきてもらったり、各部署に届け物してもらったり、私のほうがお世話になってます~」
「本当ですよ」
ややうざったそうにエツがツッコみ、彼女は明るい笑い声を上げた。
大使館にいたということは彼女も外交官なんだ。……マキさん、って苗字だよね? 一瞬、名前で呼んでいるのかと思ってしまった。なんか仲がよさそうだし。
息の合ったやり取りをするふたりに、ほんの少しモヤッと嫉妬が芽生えるも、すぐに摘み取って笑顔で挨拶を返す。
「はじめまして。暮泉花詠と申します」
「花詠さん、よろしくね。石動くんのフィアンセさんはどんな子かすっごく気になってたの。会えて嬉しいわ」
槇木さんは私の手を取って軽く上下に振った。
綺麗で飾らない印象の、大人な女性だ。エツがどんな人と働いているかも今日初めて見たけれど、こんなに素敵な女性と毎日一緒にいるのだと思うと、今さらながら無性に不安になる。



