S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


「その節は、ひぐれ屋にお越しいただきありがとうございました。ラヴァル様もお元気そうでなによりです」


 今だけ若女将に戻ってそう言うと、ラヴァルさんはうっとりとした様子で私を眺める。


「今日の着物姿もとても素敵だ。和の美しさが際立っているよ。後でふたりで話を……」
「俺の存在忘れていませんか?」


 口元は笑っているもののこめかみに怒りマークが見えるようなエツが、耐えきれなかったようで口を挟む。飄々としたラヴァルさんはエツの威嚇はどこ吹く風で、私は苦笑するしかなかった。

 その後も大使や外務大臣、政策局長などなどすごい方々に挨拶をして、婚約のお祝いのお言葉をいただいた。皆テレビで見るより穏やかそうな印象で、接しているうちに緊張が解れていく。

 重要な幹部の方にはおおかた挨拶を終えて肩の力を抜いた時、「石動くん!」と呼ぶ女性の弾んだ声が聞こえてきた。

 振り向くと、セミロングの髪の綺麗な女性がシャンパンを片手に笑顔で近づいてくる。ドレスではなくスーツを着ているから、エツの職場の人だろうか。

 とりあえず微笑んだまま推測する私に、エツが隣にやってきた彼女を紹介してくれる。