美味しそうなビュッフェに心奪われる余裕もなく、ひとまず主要な方のところへ向かうエツについていこうとすると、彼がくるりとこちらを向く。その表情はどことなく険しい。
「ただ、ラヴァルさんにだけはくれぐれも気をつけ──」
「カエさん!」
まるでタイミングを図ったかのごとく彼の言葉を遮り、聞き覚えのある声が私の名を呼んだ。
声がするほうを振り向けば、先月も会ったラヴァルさんが笑顔で立っていて、エツは口の端を引きつらせた。
実は、彼が再び来日してこのパーティーに出席するというのも知っていた。今回はプライベートではなく、国際会議のために来訪しているのだそう。
なのでこの機会に、エツは彼を警戒しつつも私を婚約者だとはっきり知らしめておきたかったらしい。
「また会えて嬉しいよ。エツトがフィアンセを連れてくると聞いたから楽しみにしていたんだけど、やっぱりカエさんだったんだね」
「ええ。彼女はもう私のものです」
こちらに歩み寄るラヴァルさんに、エツはこれみよがしに私の腰を抱いて宣言した。表情を変えず独占欲を露わにする彼に内心どぎまぎしつつ、私は丁寧に頭を下げる。



