「うん。ありがとう」
たった五文字でしか感謝を伝えられずにもどかしくなっていると、潤んだ視界に微笑む彼が映る。どちらからともなく顔を寄せ、口づけを交わした。
空はすっかり夜の色に染まり、頂上を過ぎたようで一段と美しく輝く景色が近づいてくる。薬指を撫でて幸せを噛みしめながら夜景を見下ろし、本音を呟く。
「……帰りたくないな」
「泊まっていけば?」
エツは私の髪に指を絡め、甘さを含んだ声で誘う。昼間の祥との会話を思い出してドキリとしつつ、ためらいがちに彼を見やる。
「なんの準備もしてないよ。明日も早くから仕事だし」
「じゃあ、朝帰りか」
いたずらっぽく口角を上げる彼の言葉に、私はぷっと噴き出す。
ほぼ泊まりと同じような気がするけれど、彼氏の家にお邪魔して朝帰りするシチュエーションにもちょっぴり憧れがあったので、「それもいいね」と答えた。
遊園地を抜け出した私たちは、すっかりお馴染みとなった彼のマンションへ。若干の背徳感を覚えつつ、時間が許す限り抱き合って、甘いひと時を過ごした。



