S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 最低限それだけは気をつけようと、自分自身に戒めるように言った。

 一瞬目を見張った彼は、すぐに口元を緩めて温かな笑みを浮かべる。


「俺は花詠のそういうところが好きだよ。前向きで明るくて、簡単には物怖じしないところ」


 ストレートに好きだと言われ、胸がときめいた。照れてしまって少しまつ毛を伏せるも、彼がなにやら動き出すのでそちらに自然に目が行く。

 レザーのサコッシュから取り出したのは、小さな白い箱。蓋が開かれると同時に、私も目を見開いた。

 現れたそれは、薄暗いこの中でも一番星のようにキラキラと輝いている。


「エツ、これ……!」


 いつの間にこんな素敵なものを用意していたのか。驚きと感動で言葉にならない。

 彼は上品なダイヤがついた指輪を摘まみ上げると、言葉をなくしたままの私の左手を取って薬指に滑らせる。


「貢献してほしくて結婚するわけじゃないから安心しろ。お前は俺のそばで、ずっと笑顔でいてくれればそれでいい」


 妻になる証が輝く手を握り、情熱的な眼差しを向ける彼に、胸がいっぱいになる。

 パーティーでだけじゃなく、この先もそうであってほしいという彼の気持ちが伝わってきて、じんわりと目頭が熱くなった。