思い返して苦笑するも、彼女はその表情をふっと緩める。
「でもこの間、茶房に来た石動さんが、ラヴァルさんの話を聞いて焦って飛び出していったのを見たら、絶対花詠さんのこと好きだ!ってわかりました。今日も花詠さんを見る目がすごく優しいし、とにかく幸せそうだし」
エツも周りからそんな風に見えていたんだとわかって、心がじんわり温かくなった。一緒にいて幸せなのは自分だけじゃないのだと安心する。
「うん、私もすごく幸せだよ。ありがとね」
ふたりが偵察していたおかげでいいことが知れた。彼らを見上げて微笑むと、祥はどことなく真面目な表情になって口を開く。
「なあ、姉ちゃん……」
なにかを言いかけたものの、直後に棗ちゃんがはっとして祥の袖を引っ張る。
「祥くん! 石動さんが来ちゃう」
「あー、じゃあまた。今日泊まるなら俺たちダシにしていいからね」
ニヤリと口角を上げる祥に、簡単に動揺させれてしまう私。「と、泊まらないよ! たぶん」と答えると、ふたりは笑って手を振り、慌ただしく去っていく。
祥がなにを言いかけたのかも気になるけれど、泊まるという選択肢が割り込んできて胸がざわめきだす。



