「おいおい、勝手に話を進めるな。悦斗くんと結婚したら、花詠は海外に行くことになるじゃないか。ひぐれ屋には花詠が必要だ」
「俺が海外へ行くのは、最低でも五年後です。その間に解決策は見つかるでしょう。どうするかは俺たちが話し合って決めればいい」
エツが冷静に返し、自分の中にずっとあった複雑な気持ちも整理されていく。
私もその問題についてはまだ答えを出せない。仕事で必要とされているのは嬉しいし、私も若女将を続けたいけれど、また何年もエツと離れるのは耐えがたい。
でも、これからはひとりで悩まなくていいのだ。彼が一緒に生きてくれるから。
「安心してください。結婚した暁には、花詠の幸せを第一に考えます」
エツはその目で父をしっかりと捉え、宣言した。今のはきっと彼の本心だと信じられる。
胸がじんとして、つい緩みそうになる口元を引きしめる。
「ですから、あなた方もいいビジネスパートナーになってください」
「そうだよ。お父さんたちも仲よくしよう?」
やや軽い口調になったエツに続いて私もそう言った。
父たちはバツが悪そうに目を泳がせていたものの、他の皆は私たちの意見を認めるように穏やかな表情をしていて、流れる空気に息苦しさは感じなかった。



