S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 ただひとり、父だけはなんだか情けない顔をして嘆く。


「お前まで……!」
「今のままではいけないって、あなたも本当はわかっているんでしょう。悦斗くんの言う通り、大事な周りの人たちのためにも古くて意味のない習慣は変えるべきだわ」


 母の説得に、父はむすっとして一旦黙り込む。皆に言われてこれまでよりかは父の心に響いているようだが、まだまだ折れはしない。


「石動グループには何度も裏切られてきたんだ。信用できない。ウチの内部事情を探って弱みを握り、最悪の場合潰そうとしてくる可能性だってある」
「それはお互い様だろう。というか、昔のあの件なら俺たちがチャンスを掴み取るのに成功しただけで、裏切ったなんていうのはお門違いじゃないか」
「なんだと?」


 結局この流れになるのかー!と心底呆れていたその時、エツが言い合うふたりを黙らせるように「じゃあ」と声を張る。場が静まり、皆を見回した彼が息を吸い込む。


「俺が花詠と結婚します。両家が信頼関係を結んだと公にすれば、お互いに妙な動きはできないでしょう」


 ──へ? けっ……結婚を宣言した!?