S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 眉間のシワをさらに深くした父は、箸を置いて向かいに座るお父様を睨みつける。


「相変わらず失礼なものだ。今日ここへ来た本当の目的は嫌味を言うためか? だったら、今すぐお引き取り願いたい」

「助けてほしいなら素直にそう頼めばいいものを。頑固で融通が利かないのは昔から変わっていないな」

「誰が頼むか。そもそも経営難なんかではない」

「ひぐれ屋が苦戦していることくらい、同業者なんだから知っている。手遅れになる前に、その硬い頭をよーく揉み解したほうがいい」

「余計なお世話だ!」


 ああ、また始まった……と、父ふたり以外は呆れ気味だ。でも、エツはお互いの両親に違うことを言って今日の場を設けたのに、なにげに話が噛み合っているのがすごい。

 エツにちらりと視線を送ると、平然となりゆきを静観していた彼がすっと手を挙げた。


「ひとつ、ご提案させていただいても?」


 冷静な彼のひと言で、罵り合っていた父たちが黙り込んだ。一体なにを言おうとしているのだろう。

 静まり返る中、エツが落ち着いた口調で話し始める。