S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 彼はあっけらかんとしてエツに話を振った。しかし、両親たちはのほほんとした私たちに〝なに親しげにしてるんだ〟と言いたげな視線を向けてくる。

 口の端を引きつらせていると、エツがにこりともせず口を開く。


「さあ、記憶にない。覚えてるのはこいつに〝悪い男〟の烙印を押されたことくらいだ」


 めちゃくちゃ懐かしい話を持ってくるな……塩対応も完璧だし。

 小学校時代を思い出し、私は決まりの悪さを感じつつ言い返す。


「意外と根に持つタイプなんだね。そういう人はモテないよ」
「モテなくて結構。間に合ってるんで」


 彼はそう言い、意味ありげな視線を向けてきた。

 それってつまり、私がいるからモテる必要はないってことか。……さりげなく私にしかわからない恋人アピールをしないでほしい!

 ぽっと頬を火照らせて黙り込む私に、エツはボソッと呟く。


「花詠に女優は無理だな」
「余計なお世話!」


 素で言い合う私たちを、仲居さんたちが「本当に仲がよろしくないのね……」とコソコソ話しながら気まずそうに静観していた。