一方私の母は、黒のタイトなリブニットワンピースに身を包んだエツのお母様ににこりと笑顔を向けている。
「相変わらず素敵なセンスね。還暦間近でこんな若作りな服を着るなんて、私にはマネできないわ」
「あら、ありがとう。スタイルも維持しなくちゃいけないから大変なのよ。確かに、あなたにはハードルが高いかもしれないわね」
ふたりともニコニコしているのに会話は嫌味のオンパレードで、私たちはさらに頭を抱えた。どちらの夫婦も敵対心むき出しではないか。
しかし、子供である私たちは違う。実弦さんは両親に呆れるどころか素知らぬ顔で、私と祥をまじまじと見つめて感激している。
「ふたりとも、こんなに立派になって……! 特に祥くんなんて、軽々抱っこできるくらい小さかったのに」
「俺、実弦さんの記憶ほとんどないや。でもやっぱイケメンっすね~」
腕を組んでへらっと笑う祥に、母が「品を保ちなさい、品を!」と注意した。
私は両親の顔色を窺いつつ、当たり障りのない挨拶をする。
「実弦さん、お久しぶりです。紗千さんとご結婚されたんですよね。おめでとうございます」
「ありがとう。そういえば昔、紗千も入れて四人で遊んだことがあったっけ。なあ、悦斗」



