S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 石動夫妻は海外セレブのような装いで、ふたりとも若々しい。幼い頃の記憶しかないが、綺麗に年を取っているなと感じる。

 お兄さんの実弦さんも、最後に会ったのは私が中学の時だっただろうか。エツより少し優しい顔立ちをしていて、彼も容姿は完璧だ。

 まず口を開いたのは、うっすらと笑みを湛えるエツのお父様。


「久しぶりだな、暮泉」
「ああ……君たちがここに来るのは二十年ぶりくらいか」


 あら? 私の父の表情も声色も穏やかで、わりといい雰囲気が漂っている。もしかしたら、時間が溝を埋めてくれたのかも。

 ……なんて希望を抱いたのもつかの間、ロビーに置いてある貴重な花瓶を眺めていたエツのお父様が、意地悪そうに口角を上げる。


「陶芸作家、紀藤(きとう)修悟(しゅうご)の作品か。現存するものはほぼ偽物だと言っていたぞ」
「残念ながらこれは本物だ。そっちこそ、絵画のレプリカばっかり掴まされているくせに」
「掴まされているんじゃない。好きで買ってるんだ」
「ああそうかい。オレオレ詐欺に引っかかるなよ」
「あんたもな」


 子供か!とツッコみたくなる言い合いが始まり、私もエツも脱力して大きなため息を吐き出した。なんだかレベルの低い争いだな……。