「え……けっ、こん?」
「ああ。旅館のこととか、俺が外交官だとか。そういうの全部抜きにして、俺との結婚を考えられるか?」
彼の表情は真剣だ。でも、これってプロポーズ……ではないよね。
どうして急に結婚の話が出てくるのかわからないけれど、諸々の問題をないものとすれば、もちろん私の答えは決まっている。
「そんなの……ずっと前から考えてたよ。許嫁、だったんだから」
エツの気持ちが解りかねるので、私も曖昧な返答になってしまった。許嫁だったからというのもあるけど、それだけじゃなくて、一番の理由は彼が好きだからなのに。
無意識に重ねられた手をきゅっと握る。エツはひとつ頷き、「そうか。なら問題ない」とあっさり返した。
やっぱり甘い意味はないんだろうなと、なんとなく切ない気分になる。本当に、この人は一体なにを企んでいるんだろうか。
「なにをするつもり?」
「とりあえず、近々集まって話し合いをしよう。石動家と暮泉家の皆で」
それ以上は詳しくは教えてもらえそうにない。話し合いが上手くいくとも思えないし、すっきりしないままだけれど、ひとまず「わかった」と答えた。



