餌を取り上げられた獣のごとく不満げにする彼に、私はバツの悪さも感じつつ真っ赤になっているだろう顔を俯かせる。
「あの、まだ、今日はここまでで……。両想いってわかっただけで十分っていうか」
もちろん身体も愛されたいけれど、今そんなことまでされるのはもったいない気がしてしまう。今日は想いが通じ合えた喜びに浸るだけで満足だ。
「これ以上幸せにさせられたら、ドキドキしすぎて死んじゃうかも」
恥ずかしいだけでなく、語彙力のなさにも顔を覆いたくなるけれど、これが率直な気持ちだ。
エツの顔からは獣の荒々しさが瞬時に消え、呆れたような、それでいて嬉しそうな笑みをふっとこぼした。そして、私を安心させるようにぽんと頭を撫でる。
「最初から今夜する気はなかったよ。時間もねぇし。でも、それ以上可愛いこと言ったら抱き潰す」
「え!?」
振り幅が広すぎやしませんか、と物申したくなったものの、「その反応からするに、初めて?」と問いかけられてギクリとする。
やっぱり白状しなきゃいけないか。二十代半ばを過ぎて処女なんて、自分に魅力がないと言っているようなものじゃないかな。



