「俺はずっと日本にいられるわけではないし、花詠が若女将の仕事を辞めたくないのもわかっています。そばにいられないなら、今の関係のままでいたほうがお互いのためでもあると思っていました」
正反対な仕事の都合と、両親たちのことも懸念して、俺たちは一番安全で平和な方法を取ってきたのだ。
「ですが、それはただ逃げていただけかもしれないと、遅ればせながら気づきました。俺がどれだけ愛しているか、これからはあいつに伝えていきます。あなたに負けるつもりもありません」
一歩も引く気がないことを力強い視線で訴えると、ラヴァルさんは驚いたように目を見張った。そしてくしゃっと髪を掻き上げ、頷きながら苦笑を漏らす。
「エツトの気持ちはわかった。君が女性のことで熱くなるなんて意外だな。僕も日本人女性にひと目惚れしたのは初めてだから、正直戸惑っているんだよ。諦めがつくかもわからない」
「諦めてください」
「本当に遠慮がないなぁ!」
即座にぴしゃりと返した俺に、ラヴァルさんはそうツッコんで天を仰いでいた。こういうところが憎めない。
彼がどこまで本気なのかはわからないが、俺はとにかく彼女への想いを貫くだけだ。



