「実は人のことをよく考えていて、常に力になってあげようとする、優しい心も持っているんです。私も何度も助けられましたし、領事は彼にぴったりな仕事だと思います」
花詠の温かみのある言葉が、棘が立った俺の心を丸くしてくれた。俺を優しいだなんて言う人は初めてに等しいかもしれない。
しかしその直後、ラヴァルさんは突然「デートに誘いたかった」などと言うものだから、俺は咄嗟に口を開いた。
「Il ne peut pas être autorisé.(それは許可できません)」
花詠にわからないようにフランス語で言うと、ラヴァルさんもなにかを感じ取ったらしく、同じように返してくる。
「Pourquoi?(なぜ?)」
「……Parce que je ne veux la donner à personne.(彼女を誰にも渡したくないからです)」
俺の答えに、彼は一瞬目を丸くした。そしてすぐに納得したように頷いたので、諦めてくれるかと思いきや……。
「僕は君が気に入ったよ、カエさん。ずっと日本にいられるなら、毎日会いに来たい」
まるで俺に宣戦布告するかのごとく甘いセリフを口にするものだから、再び憤りがふつふつと込み上げてくる。この人、まったく諦める気ないじゃねぇか。



