「生きててよかったってのは、私じゃなくてあんたがね。日本にいればニュースを見られるから、なにかあればすぐわかるし連絡も取れるけど、海外はそうもいかないじゃない」
「ああ、無事でなによりだ」
後ろから笑みを湛えて姿を現した父も、白髪が増えたが特に変わった様子はない。俺もほっこりしながら「ふたりも元気そうでよかったよ」と返した。
ミッドセンチュリー家具で統一され、ロフトもついている広いリビングダイニングに入ると、三歳上の兄の実弦がソファでくつろいでいた。キッチンにはここで同居している彼の妻の紗千さんが立っていて、俺にふわっと笑みを向ける。
「悦斗くん、おかえり」
「久しぶり。お前、ちょっと痩せた? ちゃんと食ってるか?」
腰を上げて心配そうに近づいてくる兄は、この通り少々過保護なところがある。昔から俺を気にかけてあれこれサポートしてくれる人で、俺と違ってわかりやすく優しいタイプだ。
「大丈夫だよ。兄貴たちも仲よくやってる?」
「もちろん。そろそろ子供作ろうかって話してるところだよ」
ざっくばらんな兄に、紗千さんは照れた笑みを浮かべた。彼女はおしとやかな性格で、俺より一歳年上だがいつまでも初々しい雰囲気を醸し出している。



