──そうして一年弱が経ち、本省へ戻る命が下された。
帰国した足で、桜が咲き乱れる霞が関へ向かう。真っ先にひぐれ屋に行きたいところだが、さすがに会社への挨拶は済ませておかなければ。
外務省の領事局政策課。最近の洒落たオフィスとはほど遠い、いかにもな事務所といったその一室では、国家公務員の男女がせかせかと事務仕事をしている。日本人ばかりのその空間はなんだか地味で、かつホームに戻ってきたなという和やかさも感じた。
まず政策課長に挨拶をし、次に顔を合わせたのは久しぶりの槙木さん。ひと足先に本省勤務になっていたのだが、同じ部署に配属になったのには驚いた。
フランスにいた時はショートカットだった髪が、今では肩につくくらいまで伸びている。なんだか以前より女性らしさが増した印象で、三十五歳になるが実年齢より若く見える。
俺に手を振る彼女の笑顔は、せっかちに現れた夏の太陽のごとく明るくエネルギッシュだ。
「石動くん! 待ってたわよ~。全然変わってないわね」
「お久しぶりです。槙木さんこそ、いつまでもお若いですね」
「あら!? パリジャンに揉まれて褒め言葉を使えるようになったのね! あの石動くんが」
「俺、そんなに無神経でした?」



