恋愛経験豊富で独身貴族の桧山さんが恋愛相談? なんだか妙だし、俺にアドバイスできるとは思えない。
「相談する相手が間違ってますよ」
「俺じゃなくて、セリーヌとパメラが教えてほしいって言ってるんだよ。日本人男性との恋愛のいろはを」
「ああ、そういう……。というか、俺より桧山さんのほうがよっぽど適任でしょう」
「もっと若いモテ男がいいってことで、石動をご指名だ。ま、面白そうだから俺も同席したいけど」
ニヤリと口角を上げる彼の後方、ひとつ離れた島のデスクに座るフランス人女性のふたりが、こちらを向いてニコニコしながら軽く手を上げる。
ふたりとも有能な社員で、普段から俺たちとも雑談するような仲だ。彼女たちの恋愛話を聞くのは別に嫌ではないが、なにせ今夜は予定があるので譲れない。
俺は苦笑いして彼女たちに同じ仕草を返し、桧山さんに軽く頭を下げる。
「申し訳ありませんが、また今度。今夜はどうしても会わなきゃいけない人がいるんで」
そう断ると、桧山さんは意外そうな顔をする。パソコンに向かう俺を腕組みして見下ろす彼は「ほぅ……もしや女?」なんて呟いていたが、聞こえないフリをしておいた。



