「いいの!?」と、なかなかに乗り気な返事をしたものだから、こちらが面食らってしまった。そこまで金を節約したいのか、はたまたあいつも同じ気持ちなのか。
それは解りかねたが、助けてやりたいのも、奇跡のような再会を一瞬で終わらせたくないのも本心。約束を取りつけた俺は、残りの仕事を完璧に終わらせようとオフィスに戻った。
九階の領事窓口の奥にあるオフィスでは、現地の職員と日本人が一緒になって業務を行っている。自分のデスクに座ると、領事の桧山さんが近づいてくる。
桧山さんは四十ニ歳の男性で、領事らしからぬ軽い言動が多いがとても頭の切れる人。口元にある整えた髭がワイルドな印象で、国内外問わず女性から人気だ。
「石動、今夜空いてるか? ちょっと相談事があるんだが」
隣にやってきた彼にそう問われ、ピクリと眉が動く。
今夜は花詠を泊める約束をしてしまったから正直別の日にしてほしいところだが、重要な話だろうか。近々あるイベントとか。
「今度ここが主催する寿司のデモンストレーションの件ですか?」
「いや、恋愛相談」
彼の口から飛び出した予想外すぎる言葉に、目が点になる。



