S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 人の多いここで銃を使われたら、花詠だけでなく一般市民も巻き込んでしまうかもしれない。なんとしても避けるため、相手の骨を折るくらい力を入れて銃を手放させた。

 そこへ駆けつけた警察は、俺も普段から顔を合わせているフランス人のアレクシ。邦人のトラブルで警察の世話になることも少なくないのだ。

 とても人がよくて気さくな彼は、くだらない話ができる友人でもある。男を引き渡しながら、もっと早く来いと文句をつける俺に、彼は無茶なことを言うなと反論していた。

 事態が収まり、花詠は安堵で気が抜けたのかよろけてへたり込みそうになるので、咄嗟に支える。

 その瞬間、止まっていた時間が動き出したような、不思議な感覚を抱いた。甘い香りが鼻先をかすめ、外国人のどの色よりも綺麗な黒い瞳に見つめられると、眠っていた愛しさが目覚めるのを実感する。

 アレクシは男を連れていくよう部下に指示を出した後、俺の元にやってきて肩を組んだ。彼は俺と花詠を交互に見て意味ありげにニヤニヤしていたので、なにを考えているかは想像がつき、俺の目が据わる。