「ねえ、石動くんが彼女いないって世も末じゃない!? こんな顔面をしておきながら」
「どういう意味ですか」
「けしからんほどのイケメンってことよ!」
言葉のチョイスがおかしい彼女は、急にはっとした様子で声のトーンを落とす。
「そうか、性格に難があるのか……」
「納得しないでください」
思わずツッコんでしまった。自分は決して〝いい人〟ではないと自負しているが、他人から言われると少々不服だ。
「まあでも、彼女がいても遠距離になっちゃうしね。結婚しづらいのが外交官のつらいところかも」
苦笑する槙木さんの言葉で、またしても花詠の姿が頭に浮かぶ。
俺が外交官を目指したきっかけは、仕事で海外へ行く父親についていった小学校時代に遡る。一度パスポートを失くし、領事館の世話になった時のことだ。
不慣れな海外でトラブルが起こるとかなり不安になる。俺もそうだったのだが、とても親身になって助けてもらって感激した覚えがある。
そこで初めて知った外交官という仕事に魅力を感じ、いつの間にか本気で目指すようになっていたのだ。



