花詠は短大に行くと言っていたから、今頃もう卒業して本格的に旅館で働いているだろう。脳裏に彼女の姿がよぎるとやはり胸の違和感も蘇り、それをごまかすためにビールを煽っていた。
忘年会というのは日本独特の文化で、海外ではあまりない習慣だ。しかし、普段なかなか接点のない部署の人とコミュニケーションを取れたり、親睦を深められるのはいい機会になるということで、フランス人職員も一緒になって飲んでいる。
先ほど、日本は酔っ払いに対しても比較的寛容なのだという話を聞いた。確かにスーツを着た男性や、特に女性が道端で酔い潰れている姿は海外ではほとんど見ない。それだけ日本の治安がいい証拠なのだろう。
そんな話も楽しみながら酒を嗜んでいると、ソファに座る俺の隣にふわっとしたショートカットの女性がやってきた。五歳年上で、三等書記官を務める槙木さんだ。
派手さはないが和風美人といった顔立ちの彼女は、丁寧に仕事を教えてくれるしサバサバしていて話しやすい。すでに日本を代表して相手国と交渉を行っているので、尊敬する人のひとりでもある。
しかし元々明るい性格の彼女は、アルコールが入るとさらにテンションが高くなるのが玉に瑕だ。今も突然細い手で俺の顎を掴み、まじまじと顔を見てくる。



