「な……なんで?」
なんで、エツが今ここに? その方向から来るってことは、茶房にいたの?
混乱状態で固まる私に駆け寄ったスーツ姿の彼は、なぜか焦燥と怒りを混ぜ合わせたような顔をして口を開く。
「花詠が今夜、ラヴァルさんに呼ばれてるってのは本当か?」
開口一番で突拍子もない問いかけをされ、私は眉を歪めてぱかっと口を開ける。
「っ、は!?」
「今、お前の弟に会って聞いた。昼間あの人と茶房で会ってたんだろ。『姉ちゃんすげー口説かれてましたよ』って言ってたけど」
「あ、あの子……!」
なんでラヴァルさんに呼ばれてるだなんて妙な嘘をついたのよ!? エツが茶房にいた理由も謎だし、わけがわからない。変な汗が出てきた……。
とにかく今は誤解を解きたくて、私は身振り手振りをして必死に説明する。
「茶房で会ったのは別にデートとかじゃなくて、お客様に対するおもてなしの一環だよ。口説かれたっていうほどでもないし、ていうかそもそも今夜呼ばれてなんて──」
「もういい」
舌打ちしてそう吐き捨てられた。
え、そっちから聞いてきたくせに!?と唖然としたのもつかの間、ぐっと腕を掴まれた。彼はそのまま敷地の外に向かってずんずん歩き出す。



