「ごめんごめん、ジョークだよ」
「で、ですよね!」
「でも、こっちに住みたいくらい日本が好きなのは本当なんだ。しばらくしたらそうするかもしれない」
へらっと笑っていた私は、席につきながら言う彼の言葉が引っかかって問いかける。
「ずっとフランスの政治家として生きていきたいのではないのですか?」
「もちろん今はこの仕事を続けていきたいし、国と国民のためにベストを尽くすよ。でも、数年後どんな気持ちになっているかはわからないからね。どうしても他にやりたいことができたら、これまでのキャリアは捨ててもいいと思ってる」
潔い発言に、私は目を見張った。彼は迷いのない表情で自論を語る。
「僕は親も政治家だから、周りからもこの道を進み続けることを望まれていて、僕もそうじゃなきゃいけないと思っていたんだけど、そうやって自分で決めつけるのはおかしいよね。だから、僕だけは自分の心の味方でいようと思ってるんだ」
ラヴァルさんの言葉が、ストンと私の胸に落ちてきた気がした。たぶん、自分に当てはまっているから。
〝若女将をしなきゃいけない〟とか、〝ひぐれ屋にいなければいけない〟とか。親にも言われてきたけれど、自分で決めつけていた部分も多い。もっと柔軟に考えてもいいのかも。
自分とは違いすぎる世界にいる人だからこそ、新たに気づかされることもあって、彼と話すのは私にとっても有意義だった。



