S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


〝もしかして例のVIP?〟と私に目で訴えてくるのがわかり、私は口角を上げてこくりと頷いた。腰を上げ、こちらに近づいてきた彼の隣に立って紹介する。


「弟の祥です。まだ大学生ですが、一応若旦那です」
「ラヴァル様、ご来館いただきありがとうございます。お会いできて光栄です」


 綺麗に一礼する祥に、ラヴァルさんはぱっと表情を輝かせて握手を求める。


「ショウさん、はじめまして。男性の着物、とってもクールですね~」
「Oh~メルシー!」


 祥はめちゃくちゃ明るいノリで彼の手を取った。弟のこの物怖じしない性格、本当に羨ましい……。

 握り合った手を上下に振りながら会話をするふたりを、私は微笑ましく眺めていた。しばらくして祥が棗ちゃんのほうへ戻っていくと、ラヴァルさんは私に好奇心に満ちた視線を向ける。


「いいね、若旦那。カエさんと結婚したら、僕もこうして働けるのかな?」
「えっ!?」


 唐突な発言に、私は驚きの声を上げた。単なる例え話なのに、結婚という単語に過剰反応してしまった。

 ひょっとこみたいな顔をする私に、ラヴァルさんはおかしそうに笑う。