思ったことをそのまま口にしていた私は、こちらをじっと見つめるラヴァルさんを見て、言葉が難しかっただろうかとふと心配になった。
「あ、意味伝わったかな……」
「ありがとう。ちゃんと伝わってるよ」
ひとり言をボソッと漏らすと、彼はふっと表情をほころばせた。
「僕は、フランスではやっぱりどこへ行っても政治家として見られるから、ちょっと寂しくなる時もあるんだ。でも今は、ちゃんと〝僕〟を見てもらえてる感じがして嬉しいよ」
わずかに切なさを含んだ穏やかな笑みを浮かべる彼も、人知れず心許なさを感じているのかもしれない。それを少しでも癒してあげられたなら、今日お声がけをしてよかったと思える。
私も笑みを返した時、入り口のほうから聞き慣れた声が聞こえてきた。振り向くと、予想通り着物を着た祥がやってきて、棗ちゃんや従業員の皆に挨拶をしていた。
今日彼はチェックインから勤務する予定だけれど、早めに出勤して棗ちゃんに会いに来たのね……。相変わらずお熱いこと。
彼女に甘い笑みを向けた祥は、私たちに気づいて二度見した。彼ももちろんフランスの閣僚が来るというのは知っているが、まさかここでお茶をしているとは思わなかっただろう。



