S系外交官は元許嫁を甘くじっくり娶り落とす


 翌朝、いつもより少し早く出勤した私は、朝食を持ってラヴァルさんの部屋へ向かった。朝食の提供も基本は仲居さんがやってくれるのだが、今回のように特別なお客様は例外である。

 彼が朝食の時間に希望していたのは午前八時。声をかけて襖を開けると、浴衣姿も様になっているラヴァルさんが爽やかな笑顔で出迎えてくれた。


「ラヴァル様、おはようございます。よくお休みになれましたか?」
「ええ、とっても。朝になって気づいたけど、庭の花も見事だね」
「ありがとうございます。あれはツツジという花で、今が満開なんです」


 中庭では濃淡が違うピンク色や、赤や白の色とりどりなツツジが目を楽しませてくれる。それも気に入ってもらえたようでなによりだ。

 そうして、重箱のような入れ物に色とりどりのおかずを詰めた朝食をお出しした。ラヴァルさんは目を輝かせてとても喜んでくれたものの、なぜか眉を下げて微笑みかける。


「昨日はすみません。急にデートなんて言われて困ったでしょう」
「ああ、いえ!」
「この街を案内してもらって、もっと日本の話を聞きたかったんだ。カエさんとなら楽しそうだなって」