「小町さんにも、もうどうにも出来ないんだ」

「うん……」

「小町さんも、苦しいんだよ」

「ねこはちさん……」



ねこはちさんは、私をまっすぐ見つめた。

それから、こう言った。



「寅山、おめぇさんはいつもこの世にひとりきりみたいな(つら)してっけど、そうじゃねぇ。親父さんもお袋さんも、おめぇさんの為に働いてンだ、多分な」



ねこはちさんの真っ直ぐな瞳に、私がうつっている。



「一緒に遊べなくても、飯食えなくても、人間には切っても切れねぇ『絆』ってもんがあるんだぜ」

「『絆』……」



ねこはちさんはうなずく。



「黙ってちゃ何も変わんねぇさ。家族にも友達にも、少しの『勇気』ってもんが必要なんだ」

「……」



ねこはちさんは。

きっと淋しいんだ。

私以上に。



小町さんや、きょうだい達に。

会いたくて。

そばにいたくて。



たくさん、たくさん。

淋しくて。

恋しかったんだ。



「きっと、あるよ」
と、私は言った。