きみがいる、この世界で。

一ヶ月ぶりの実家は、なんだか不思議な感じだった。拍子抜けするほど何も変わっていない。自分は本当に一ヶ月もいなかったのだろうか、ただ夢を見ていただけじゃないのか。そう思わざるをえないほど、当たり前のようにこの世界でも日常は続いていた。

「涼音?」

「お母さん……」

玄関のドアからお母さんが出てくる。きっとポストに荷物が投函されていないかどうか見に来たのだろう。たまにこうして学校帰りの私を出迎えるような形で偶然家から出てくることがある。

「どうしたの、そんなところで突っ立って。……ってあれ?」

「なんでもない……」

お母さんの顔を見た瞬間、一気に涙が溢れ出た。どうしたんだろう。自分でも驚く。

「どうしたの」

お母さんは転びそうなほど慌てて私の元へ駆け寄ってきてくれた。

「具合でのも悪いの?」

「ううん……」

悲しいわけじゃない。それなのに涙が止まらない。

「とりあえず家に入りなさい。あ、今日、涼音の好きなお菓子買ってきたよ」

お母さんは私が持っていた荷物を持つと、私の背中を押して家に入るよう促す。

家の中へ入ると、余計に涙が溢れ出た。

シューズボックスの上に置かれている、たくさんの家族写真。
幼稚園の頃に、毎年の父の日と母の日にプレゼントした、両親の似顔絵。
小学生の頃に訪れたハワイで、お母さんと一緒にお父さんにねだって買ってもらった、ハワイアンミュージックのオルゴール。

当たり前だと思っていた空間が、とても暖かく特別なものだと実感する。私は両親と十七年間この家で暮らしてきた。その思い出が、この玄関にギュッと詰まっている。