きみがいる、この世界で。


【私、高橋くんのこと、好き】

彼の顔を見るのが怖い。でも伝えなければきっとこの先ずっと後悔すると思った。

【ありがとう】

スマートフォンから顔を上げる。目が合うと高橋くんは優しく、悲しいほど優しく微笑んだ。彼の目にもうっすらと涙の膜が張っているように見えるのは、私が泣いているからだろうか。

【泉本さん、幸せになってね】

永遠の別れのような言葉に、また涙が溢れ出る。

そんな悲しいこと言わないで欲しい。
そばにいて欲しい。どこにも行かないで欲しい。

【高橋くんは、私のことどう思っているの?】

【好きだよ】

高橋くんの瞳が揺れた気がした。

【それなら】と私が送ったのと、【でも】と彼が送ったのは同時だった。

【俺、これからは泉本さんのそばにいられないから。だから泉本さんは、泉本さんを守ってくれる人と幸せになって欲しい】

今の私にはあまりにも酷な言葉だった。

元々住む世界が違う私たちが一緒に幸せになるのは、難しいことなのかもしれない。それでも、好きな人に、「別の人と幸せになって欲しい」と願われるのは、言葉にできないほど悲しく苦しい。

何もいえず立ちすくむ。

高橋くんは優しくー触れるか触れないかわからないほど優しくー一瞬だけ私を抱きしめると「帰ろうか」と微笑んだ。