きみがいる、この世界で。

改まった表情の友梨ちゃんに呼びかけられたのは、その日の掃除の時間だった。校舎の外にあるゴミ捨て場に、ゴミ袋を持っていこうと教室を出た時、

「……涼音ちゃん」

か細い声で名前を呼ばれた。

「友梨ちゃん……どうしたの?」

「ゴミ捨て、一緒に行ってもいい?」

「……うん」

黙って二人で階段を降りる。

友梨ちゃんとはいつも何を話していたのだろう。前までなら何も考えずに話題が頭に浮かんだのに、今は必死に考えを巡らせても何も出てこない。それより友梨ちゃんはどうして一緒にきたのだろう、と思った時、彼女は「あのさ」と切り出した。

「私、何かしたかな?」

彼女の質問は抽象的だったけれど、今朝阿部くんに尋ねられたことと関係があることはすぐにわかった。

「一昨日ぐらいから、なんだか涼音ちゃん、私に余所余所しい気がして」

「……そうかな」

ヘラッと笑って誤魔化す。友梨ちゃんは泣きそうな顔をした。

「私の気のせいじゃないよね」

友梨ちゃんは足を止めた。つられて私も立ち止まる。私たちの隣を、違うクラスの女の子たちがアハハと大きな声で笑いながら通り過ぎていく。友梨ちゃんは女子生徒たちを見えなくなるまで見送ってから口を開いた。

「私、嬉しかったの」

「……嬉しかった?」

友梨ちゃんは控えめに首を縦に振った。