きみがいる、この世界で。

放課後、友梨ちゃんに連れられて、学校から電車を乗り継いで1時間ほどある彼女のお家にお邪魔した。焦茶色の門を抜け、白のガーデニングテーブルとチェアのセットが置かれた芝生の脇を歩き、お家に入る。まるでおとぎ話にでも出て来そうな綺麗なお家だ。

「今日来てもらうと思っていなかったから、結構散らかっているかも。ごめんね?」

リビングに行くと、ダイニングテーブルの上にはたくさんの書類が散乱していた。ソファーには、お母さんのものだろうか?高そうなバッグがいくつも置かれていた。

「最近お母さんもお父さんも仕事が忙しいみたいでさー。お父さんはいつでも仕事しているし、お母さんは遅くに帰ってきて、朝はギリギリまで寝ていて、家の中がもう汚くて汚くて」

彼女の両親は共働きらしく、二人とも夜遅くまで帰ってこない日が多いらしい。夜ご飯にはお母さんが前日に買い置きしているスーパーのお惣菜を食べることが多いようだ。

「暇だし、何度か私がご飯を作ってみたりしたんだけどね。一度、火を止めるのを忘れてお鍋の底を派手に焦がしちゃって、それから『危ないから料理はするな』って言われちゃった。それから全く料理はしていないの。お母さんもほとんど料理しないから、涼音ちゃんに教えてもらえることになって本当によかった」

「でも私も教えられるほど立派な料理は作れないよ?」

「私もたまにお母さんと一緒にするぐらいだから」と付け加えると、友梨ちゃんは「そんなことない!」と語気を強めた。

「阿部くん、涼音ちゃんの料理を見て『美味しそうだ』って言ってたし、高橋くんも『美味しかった』って絶賛してたもん。だから涼音先生、どうぞよろしくお願いします」

阿部くんの部活の関係で次のデートは少し先になりそうとのことで、友梨ちゃんはお弁当を作ってあげることに決めたらしい。彼女が今日の数学の授業中に考えたというお弁当の具材候補が書かれたノートのページの切れ端を一緒に見る。

「阿部くん、好き嫌いはあるの?」

「好きな食べ物はハンバーグって言ってた。嫌いなのはピーマンだって」

「ハンバーグ、良いね。時間が経って冷めちゃっても、それほど味は変わらないし」

メインのおかずはハンバーグにすることを決めて、私たちは買い物に行った。具材と調味料を買って、インターネットで公開されているレシピを参考にしながら作る。ご両親の夜ご飯にも、と5つ作ったうちの2つをお皿に盛り付け、ダイニングテーブルに運ぶ。