きみがいる、この世界で。


「明日とかどう? 部活ないんだけど」

「明日か……、あ、明日いいじゃん、明日にしよ」

明日は千枝が所属しているソフトボール部の部活がある日だ。2人でいるところを見られる可能性は限りなく低い。後ろめたい気持ちを感じつつ、いくなら明日しかないとも思う。

「あー、マジで助かった。ありがとうな」

「ううん、確かに悩むよね。私もお父さんにプレゼント、ってなったら、ネクタイしか思いつかないもん」

私の答えに陶山は「だよなあ、難しいよなあ」と明るく笑った。

「あ、そうだ」

教室に向かって歩き出した時、陶山はピタリと足を止めた。

「この話、みんなには秘密にしておいてくれる?」

「秘密?」

「うん、なんだか母さんの誕生日プレゼントで悩んでいるって知られるの、恥ずかしい。というか絶対に知られたくない」

「なにそれ」

別に恥ずかしいことでもカッコ悪いことでもないんだけどなあ、と思いつつ「わかったよ」と返す。きっと男の子には、男の子にしかわからない”恥ずかしさ”があるんだろう。

「やっぱり泉本だわ。マジでありがと」

「ありがとう。でも褒めてもなにも出てこないよ?」

「あ、それは残念」

陶山は悪戯っぽく笑った。