きみがいる、この世界で。

休み時間は友梨ちゃんたちと、放課後は友梨ちゃんたちと教室でお喋りをしたり図書室で宿題をしたり、はたまた高橋くんとスイーツを食べに行ったり音楽室で彼が弾くピアノを楽しんだりと、こちらの世界にきた時は想像もできなかったほど充実した時間を過ごしていた。

【明日の放課後あいている? 新作のスイーツ、食べに行かない?】

私も甘いものが好きだけれど、高橋くんも同じぐらい甘いもの好きらしい。

【クリスマス当日に生まれたからかな。ケーキとか、甘いスイーツ、大好きだよ】

そうはにかみながら教えてくれて以来、2回ほど一緒にスイーツ巡りをした。

翌朝、寝る前に届いた【あいているよ。行こうか、楽しみだね】彼らしいシンプルなメッセージを見て、胸を躍らせながら電車に乗る。

季節限定のフルーツケーキ。クリームは生クリームとチョコレート味の2種類がある。高橋くんは『ショートケーキよりチョコレートケーキが好き』と言っていたから、きっとチョコレート味のクリームを選ぶだろうな。私は生クリームを選んで、一口交換するのもいいかも。既に食べに行った人のSNSを見て、より気持ちが高まっていた時、【ごめん、今日の約束、延期してもらってもいいかな】とメッセージが届いた。

約束を延期するとは珍しいな、急用でもできたのかな。

【わかった。私、今週末でも来週の放課後でもいつでもあいているよ。また高橋くんの都合の良い日、教えてくれる?】

すぐに返事をしたのに、学校に着くまで返事が来るどころか、既読すらつかなかった。


彼が体調を崩していると知ったのは、朝礼で担任の先生が「最近夏風邪が流行っているから気をつけろよー。高橋も高熱が出ているみたいだから」と言ったからだ。

「高橋くん、体調悪いの?」

「そうみたい……私も知らなかった」

正直に答えると、友梨ちゃんは「心配だね?」と眉毛を八の字にした。

「高橋くんのご両親って共働き? 熱出ている時に一人だと心細いよねえ……」

「どうなんだろう。聞いたことなかった」

今思えば、彼が一人っ子だということ以外、彼の身辺に関することは何も知らなかった。

「まあ、男の子だし。大丈夫なのかなあ」

友梨ちゃんはそう結論づけたけれど、心配になって、一応メッセージだけ送る。

【担任の先生から、体調を崩していること、聞いたよ。何か困ったことはない?食べたいものとかがあれば持って行くから、遠慮なく教えてね】

高橋くんは割と返信が早い方で、遅くてもいつもなら30分ほどで返ってくる。それなのに今日はお昼休みになっても返事は届かない。