高橋くんが連れてきてくれたアイスクリーム屋さんは、駅の近くにある商店街のちょうど中央に建っていた。淡いブルーを基調とした外観で、カラフルな文字で店名が書かれた看板が自動ドアの上に掲げられている。
ドアが開くと、冷気が身体を包んだ。華やかな外観とは反対に、店内は穏やかなヒーリング音楽のようなものが流れている。
「いらっしゃいませ」
店の中には二人で使う小さめの机が5つ置かれていて、二組お客さんがいた。女の子同士のお客さんと、カップルのお客さん。
【ここのお店、スマートフォンで注文ができるんだ。どのアイス、食べたい?】
高橋くんはスマートフォンでアプリを開き、注文画面を見せる。
どのアイスクリームも美味しそうだけれど、少し悩んだ末に、最初に惹かれたクレープアイスを指差した。クレープ生地の中に、ストロベリーアイスとバニラアイス、そしてベリーが入ったもの。高橋くんは私がお願いしたものと、チョコレートアイスクリームとバニラアイスクリーム、バナナが入ったクレープアイスの2つを注文した。
【この近くに大きい公園があるんだ。ベンチがあるから、そこで食べようか】
彼の提案に従って、それぞれ渡されたクレープアイスを持って店を出た。
【溶ける前に、食べちゃおう】
星が輝き始めた空を見ながら、高橋くんと並んでベンチに座り、クレープアイスを食べる。
ストロベリーアイスの部分を齧ると、いちご特有の甘酸っぱい味がした。クレープ生地も一緒に齧ったからか、いつもより甘く感じる。
『しんどい時は甘いものを食べたら元気になるよ』
安易な考え方だと思っていたけれど、本当なのかもしれない。甘さが疲れた心に沁みて、こわばった気持ちが少しずつほぐれて行く気がした。
【少しは元気でた?】
先に食べ終えた高橋くんより少し遅れて食べ終わると、高橋くんは私の様子を盗み見るように軽く一瞥した。
【うん。アイスクリーム、美味しかった。ありがとう。高橋くんの言う通りだね、甘いものを食べたら元気が出たよ】
私の言葉に、高橋くんは優しい笑みを見せた時、ドキッとした。二人で出かけた時の帰り道と同じように。けれどあの時よりも、心に生じた衝撃は大きい気もする。
……本当に何なんだろう、この心臓のうるささは。
【それならよかった。でも、もし何か話したいことがあれば、話してね。俺でよければ、話、聞くから】
【今日、】
聞いてほしいと思った。彼の言葉に甘えたいと思った。
語って聞かせるほどかっこいい話ではないこともわかっていた。
普段なら「ありがとう。でも大丈夫だよ」と返すところだ。
それでも今日は、よほど心が疲れていたのか、逆に甘いものを食べて少しだけ前向きになれたからか、それとも別の何かがそうさせたのかがわからないけれど、高橋くんに話したいと思った。
【自分がね、すごく”嫌な奴”に思えちゃった。転校してきてからずっと親切にしてくれた人に、ひどいことを言ってしまった】



