きみがいる、この世界で。

「また明日ね~」「バイバイ!」

こちらの世界へ戻ってきて4ヶ月が経った。外に出るのが億劫になるほどの暑い日々は終わりを告げ、本格的な冬の訪れを予感させる冷たい風が教室の窓から吹き込む。

新しい学校へ転校して、早2ヶ月。前の学校とは何もかもが違うこの学校に、少しずつ慣れてきた。授業はゆっくり進むし、宿題も少ない。放課後は部活に打ち込んでいる生徒もいれば志望校合格に向けて毎日塾に通う生徒もいるし、バイトに勤しむ生徒もいる。「生徒の自主性を育む」校風に合わせ、生徒もそれぞれやりたいことに打ち込んでいた。

全員が難関大学を目指して勉強に励んでいた前の学校とは雰囲気があまりにも違いすぎるから完全に馴染んだとは言えないけれど、仲の良い友達もできて、それなりに充実した穏やかな日々を送っていた。

放課後、誰もいなくなった教室で日誌を書く。友人たちは「手伝うよ?」と言ってくれたけれど、それほど量もないし、すぐに終わるはず。グラウンドから聞こえる運動部のかけごえをBGMに、今日の授業内容、行事、連絡事項、一言を埋めていく。

途中で、スマートフォンが鳴った。メッセージの受信を知らせる音に、ペンを置く。差出人は陶山だった。

【試合、勝ったぞ】

今大晦日からお正月にかけて行われる全国大会への出場をかけた県予選に挑んでいる、陶山たちのチーム。今日の試合相手は実力が拮抗しているチームで、一昨日に連絡をした時は、珍しく【勝てる確率は5割だな】と弱音を吐いていた。

【おめでとう。次、準決勝だよね? 頑張って】

幸せな気分をお裾分けしてもらえたな、と嬉しく思いながら、日誌の続きにペンを走らせる。


後少しで書き終わるという時、一緒に日直を担当していた前の席の男子生徒が「ごめん! すっかり日誌かくの忘れてた!」とユニフォーム姿で戻ってきた。彼は野球部に所属しているらしく、全身白の練習着で身を包んでいる。