「玉木さんの夢はそうじゃないの?」

「……あー、うん。言われてみれば、私もどんな夢だったのか忘れてるかも」


普通じゃないと自覚がある上で、夢が繋がっていて人と話しています、なんて答えるのはちょっと変かなと思い、話を合わせて誤魔化す事にした。私にもこんな器用な事が出来るんだなと自分にびっくり。空気を読むっていうのはこういう事で合ってるのだろうか。

でもまぁ、これは私とあの子の約束だし、私達にしか分からない事だから、他の人に話してもしょうがない。二人の秘密にしていたい気持ちもある。


「……そっか」


中川君は薄い微笑みを浮かべて、小さく答えた。会話はここで終わってしまい、中川君が教室を出て行く後ろ姿を見送った。きっと始めに言っていた用事を済ませに向かったのだろう。

教室の扉が閉まると、私は手元の本をそっと開いて、また閉じた。きっとここに答えなど無いのだろうと、中川君と話して見えた現実が教えてくれた。こんな事は結局無意味なのだ。だって、これは私と彼の間に起きている特別な出来事なのだから。

早く次の夢で会いたいなと思う気持ちと、次の夢が最後かもしれないという気持ちがせめぎ合っている。落ち着かず、何かしなきゃと無駄に焦る日々はなんだか辛くて、結局私は読書と勉強に没頭した。気持ちを紛らわせる方法を、私はこれ以外に知らなかったから。



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