フォアグラとトリュフを贅沢に組み合わせた美味しい料理のはずなのに、味がよくわからない。そのまま窓に目を向ければ、今にも泣きそうな自分の顔が映っている。

 背中まであるナチュラルだけど艶っぽさもあるアッシュベージュ色の髪は、彼の好みに合わせたものだった。クリッとした猫目も可愛いって言ってくれたよね。

 一七〇センチしかなかった彼には、私が一六〇センチあるからヒールのある靴は履かないでくれと言われていたけれど、そんなのもう関係ない。

 ここに来る前に新調した五センチあるヒールの靴。最初は履き慣れていないから歩くのが難しかったけれど、慣れたら平気でたった五センチの高さなのに視界が変わって世界が違って見えた。

 これからは彼の好みに合わせることもない、自由なんだって前向きになろうと思っていたのに、どうしてもセンチメンタルになってしまう。

「三カ月前から浮気していて、あっという間に相手を妊娠させたとか信じられない」

 それが振られた理由だった。私とは六年も付き合ってやっと同棲しようってなったというのに、浮気相手とは出会って三カ月で妊娠&結婚だなんて、あんまりじゃないだろうか。

 今でも彼が私に向かって土下座をして、別れてくれと懇願したことを鮮明に覚えている。一緒に住むはずだったマンションの違約金もこれまで買い揃えた家具のお金も、そして私に対する慰謝料までも渡されて別れてくれと言う。