「満足したか?さあ、行くぞ」

「やだぁ!誰かッ!助けて!」

ヤクサは軽々と杏を抱き上げ、どこかへと歩いていく。その間も杏はずっと泣きながら叫び続けたものの、最後の最後まで人の姿を見ることはなかった。

ヤクサがしばらく歩くと、古びた祠が見えてくる。その前でヤクサが何やら呪文のようなものを唱えた。すると、古びた祠が光を放ち、立派な赤い鳥居に変わってしまった。

「ッ!」

杏は察した。この鳥居をくぐってしまえば、そこは神の領域なのだと。もう二度と人間の世界に戻ることはできないのだと。

「杏、子どもは何人ほしい?俺は大勢で食卓を囲んだり、眠ったり、遊んだりしたいのだが」

ヤクサは笑い、杏は恐怖から泣き叫ぶ。二人が鳥居の向こうに入った瞬間、鳥居はまた祠へと姿を変えた。