『あら、雪が降ってきましたね、』


わたしはレシナに厚手のカーディガンを
羽織らせ、暖炉のそばで温めておいたポットから
お湯を注ぎアールグレイのホットティーを
彼女に差し出した。

すると僅かに笑みを浮かべ ブラインダーの
隙間から僅かに見える寒空を切なく眺めている。

彼女の故郷の空と似ているのか
ダークグレイの12月の空がお似合いで、
表情もどこか悲しげで虚ろげ。

声かけてあげたいけど それはいいのよ
みたいな空気もレシナの人格性を表している。

「サキ、オレはこういう空を見ていると
無性に歩きたくなる
          なぜだかわかるか?」


わたしは静かにしました。









そしてホットティーに口をつけ

       腕組みをして
          首を傾げて、


『あなた、北国育ちなのね
       若いっていいわ、
わたしなんかおばさんになるとこんな空、
想い浮かべても こたつに入ってじっとしてたい
  しか浮かばないわ』


「ふふ」


彼女?彼?

話し口調からして彼だけど姿、しぐさは
本当に女性らしく まるでレシナという彼女が
つかめない。

冬空に歩くとなると
風邪をひけばわかるわ、と思うけど
煽って挑発する理由がよくわからない。


『レシナ.....あなたをわたしはまだつかめてない、
まるで.........どころか、まったくね。

だけどあなたはここに戻ってくるのなら
散歩でもどこでも好きなように行ってらっしゃい』


レシナは髪を少し揉むように梳かして
再び空を見上げました。


「言い忘れたが
    オレはこう見えても精霊、
雪女風の精とでもいうべきか、
     ひとつお出かけでもして
   街ゆく人々にプレゼントでも
            して差し上げよう」

彼女はそういうとわたしの私服の
ダウンジャケットに薄手のホワイトスカート、
いつの間にか用意したのか黒のタイツに
スノーブーツ。

用意だけは冬装備は完璧である。

あきれて
彼女にマスクしていきなさいというと、


右手を振って姿を消した。


去り際の視線はまるで

雪女風の精霊にマスクはいらない、
でもありがとう。
オレがマスクをしない理由は
ふぅーって吹くと
一気に町中凍らしちゃうからだよ?

といわんばかりにニヒルな笑みが
印象に残った。

彼女は当分戻ってこないのかもしれない。

彼女が出かけることで
この世界を真っ白に染め上げるんでしょう

ねえレシナ......