「現場の私から統合団長にご相談申し上げて…」

隊長が続ける横で、人事部長の頭がかくかくと
縦に揺れている。
この件は前々から2人で相談してたんだな。


第1から第3までの各隊の騎士団トップが
統合団長だ。
この御方からなら国王陛下に、直に話は届く。


「これは王命であると、心得て欲しい。
クリストファー・クレイヴン・グラッドストン。
 君のところでクレイヴン家で、殿下を預かって貰えないか。
 王太子殿下におかれては、通いで執務にあたっていただければ」


え、えぇっっ ((((;゜Д゜)))

何、何言ってるの、この人?

嫌です!
ぜ~ぇったいに!
い!や!


「わ、私の一存では、即答致しかねます……」

逃げる姿勢の俺を、人事部長が逃がさんとする。


「ご当主からはご了承のお返事をいただいている
 謹んでお引き受けしてくださると、心強いお返事だった」


何してくれちゃってんねん、父よ……


父は王宮の財務省勤めだが、こちらとは別棟で。
王太子殿下の噂はうっすらとは聞いていても、
その実際のお姿はご存じない。


俺も『王家の秘密』は漏らせなくて、父には
話していない。
グレイスとカリーナの口も堅い。


だから、そんな呑気な返事が出来るのだ。
またそれを、この2人は知ってて先に父に話を
通した。


侯爵家現当主の言葉は絶対だ。

王命であると。
その言葉がある限り、父は断らない。
それがわかってて、この2人は……
大人って汚い。

さっき取り合った手は、戻ったら殺菌消毒して
やる。


それでも、俺は抵抗した。


「父もそろそろ定年ですし、最近は判断力に欠ける……」

「グラッドストン侯爵、定年まで後10年あるね」


……しまった。
相手(敵) は人事部長。
俺は詰んだ……