グレイス、君のお陰で思い出したよ。


殿下は俺を馬鹿にしたり、笑わなかった。

俺達は14歳、最高に生意気な年齢だ。
初等部1年生の7歳の君が好きなんだ、って
打ち明けた俺を。

殿下は笑ったりしなかった。


「秘密にしてていいのに」って、
心配してくれたんだ。


それこそ君が言うみたいに、
ひとの話を真剣に聞いてくれた。

このひとは、俺をそのまま受け入れてくれた。


俺は忘れていた。
大人になって、日々の仕事に追われて。

殿下がお持ちの、
資質の素晴らしさを忘れていたよ。
このひとの下で、
笑顔で働ける幸せを忘れていたよ。


ありがとう、グレイス。
ありがとう、殿下。


これから何年経とうとも、この気持ちは
忘れないようにしよう。

タイプの女子を打ち明け合った14歳の放課後
一緒に校庭での君を眺めていた16歳の昼休み


あの日の俺達を
忘れないようにしよう。



……でも。
もし何年後かに、俺達の銀婚式とか金婚式で。

殿下から
(もう国王陛下になっていると思うけれど)
以前いただいたお言葉のように
君の一輪車の蛇行や跳び箱での跳躍力の素晴らしさを
称える手紙をいただいたら。


また、その箇所は塗り潰すと思うけどね。


 

 おわり




 *****


おまけAおわりです。

引き続き、おまけBもよろしくお願い致します!