「ただいま」



大型テレビでcoc9tailのライブを観ていた美聖は、慌てて玄関へと向かう。



「おかえり」




美聖が出迎えれば、息吹は笑って「ただいま」を繰り返しながら家に上がる。洗面所へと消える息吹の姿を見つめながら、彼女から滲む疲労に美聖は心配になる。


気がつけば夏はとっくに終わりを告げ、気候が落ち着かないまま秋に突入して夜はかなり冷え込む10月になっていた。


2桁の月になった途端、一度は鎮まっていたメディアがこぞって『coc9tailの年内解散』を持ち出したのだ。