晴れやかな朝を迎えたその日の深夜、美聖の撮影現場はピリピリと緊張が走り続けていた。単純なことだ。疲労と睡眠不足は人を壊す。


撮影現場はまさにそれを体現したかのような地獄と化しており、溜息や舌打ちがあちこちで聞こえてくる。



「美聖さんもここで一旦上がりますか?」



片平は、蒸し暑さから垂れる額の汗を拭いながら隣の美聖に問う。

美聖はひとり涼しい顔でスマホから顔を上げて、にっこりと微笑む。



「ん?俺は大丈夫だよ。片平さんこそ早くご飯食べてきなよ。俺の出番まだまだ先だろうし」

「……ありがとうございます」



片平は美聖を見つめ、マジでこの人は聖人かもしれないと疲労と湿度でやられた頭で考えた。