彗星の如く芸能界に現れた柊 美聖の俳優デビューは実に華々しいものだった。


無名ながらに映画『笑う罪人』の主演に大抜擢され、その美しい容貌と、吸い込まれるような演技力で、日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞した。


どれだけ話題になっても当の本人は、映画の告知もテレビにも出演せず、授賞式で彼の素性を我先に掴もうと、どこも躍起になっていた。



『栄えある第46回日本アカデミー賞 新人俳優賞は、『笑う罪人』柊 美聖さんです。おめでとうございます。柊さんはご登壇ください』



拍手に包まれたレッドカーペットの上を歩く美聖の姿は、照明の下でさらに輝きを増す。


美聖は、前回新人俳優賞を受賞した俳優からトロフィーを受け取ると、マイクに向かって挨拶する。