「未咲はいないの?幼なじみ」
きっかけはほんの些細なことだった。
高校2年になってもまた夏奈とクラスが一緒ではしゃいでいたあたしが、「もうあたしら幼なじみじゃん」と何気なくこぼしたのがきっかけ。
夏奈は隣のクラスに丸宮くんという小学校から同じ学校の幼なじみがいるらしい。
「あたしはー…」
そう言って教室を見回しながら、内心そんな人いないだろうと軽く考えていた。
窓側の一番うしろに座っている、君を見つけるまでは。
「……いた」
保育園から一緒の男の子。
今まで全く意識したことなかったのに、夏奈が運命だの奇跡だの言うから。
「…傘もってきてる?」
つい話しかけてしまった。
運悪く一番最後に順番が回ってきた三者面談が終わったあと、昇降口の前で座り込んでいた君に。
「…ない」
「……だよね」
真っ黒のパーカーのフードをかぶって、ぼーっとしている君は、なんだかしんどそうに見えた。
ザーザーと降り続ける雨に甘えて、君の隣に腰かける。
「三者面談だるくない?」
「…だりぃ」
「進路とか考えんのだるいし親うるさいし」
「渡された紙とか文字ばっかでまじ意味分かんないし」
「……もう決めた?」
「…まだ」