だって、幸せそうに笑ってる。



親友と腕を組んで楽しそうに笑ってる。

出会ったばかりの頃を思い出す。

そういえば未咲はあんなふうに、笑う人だった。


どうして気づけなかったんだろう。


自分を責めても、もうあの日は戻らない。

分かってる。


未咲を幸せにできるのは俺じゃないってこと。



「っ……」



その笑顔が、もう一度見たかっただけなんだ。



生ぬるい水が頬を濡らす。


未咲がこっちを振り向く前に、慌てて踵を返した。

そのとき足をくすぐったミサンガが、ズボンの裾から床に落ちる。

もう役目を終えたそれは、しなしなできれいではなかった。


学生の頃に見つけた思い出コーナーと書かれた場所に切れたミサンガを置き、メッセージを添えてみる。


最後にそれを少し遠くから眺めて、水族館をでた。


一生未咲といる


学生の頃の願い事は叶わなかったけど、ミサンガの効果は本当にあるのかもしれない。




“もう一度、未咲の笑顔が見たい”